野村マイクロ・サイエンス(6255) 水で未来を磨く超純水の匠


1. 企業概要

野村マイクロ・サイエンス(NOMURA MICRO SCIENCE CO., LTD.)は、半導体・液晶・医薬・食品などの製造現場に欠かせない「超純水装置」および「水処理システム」の設計・製造・保守を手がける企業である。1969年に創業し、神奈川県相模原市に本社を構える。

主力の「超純水装置」は、水分子以外の不純物を極限まで除去した超高純度水を生成するもので、半導体製造ではフォトリソグラフィ工程の洗浄に不可欠だ。水処理には逆浸透膜(RO膜)やイオン交換技術などを用い、さらに同社独自の自動制御システムを組み合わせることで、安定した水質と省エネ運転を両立している。

事業構造の特徴は、装置納入後の「保守・点検・薬品供給」といったストック型収益が大きい点である。顧客は装置を24時間稼働させる必要があるため、メーカーとの継続契約が必須となる。このため、単発の納入ビジネスだけでなく、安定的なリカーリング収益モデルを形成している。

また、国内に加えて台湾・中国・韓国・マレーシアなどアジア各国にも拠点を展開。世界の半導体製造拠点の近くに位置し、現地でのエンジニアリング対応が可能な体制を築いている。高い技術力と信頼性が認められ、TSMCやサムスン、キオクシア、ソニーなどの大手半導体メーカーとの取引実績を有する。


2. 直近の業績と収益性

2025年3月期(予想)業績は以下の通り。

  • 売上高:790億円(前年比 +8.7%)
  • 営業利益:105億円(前年比 +12.9%)
  • 営業利益率:13.3%
  • ROE(自己資本利益率):18.5%
  • ROA(総資産利益率):11.2%

2024年3月期も好調で、売上高726億円、営業利益93億円と過去最高を更新。半導体業界の在庫調整が長引く中でも、既存装置の改修やメンテナンス需要が底堅く、利益率を維持した。為替の円安効果も海外売上の押し上げ要因となった。


3. セクター分類と指標平均

野村マイクロ・サイエンスは、東証33業種区分では「機械」に属する。
同セクターの平均値は以下の通り(2025年時点の概算)。

  • 営業利益率:8.5%
  • ROE:9.5%
  • ROA:5.1%

4. セクター平均との乖離と要因

営業利益率・ROEともにセクター平均を大きく上回る。その要因は以下の通り。

  1. 高付加価値な受注生産型モデル
     超純水装置は顧客ごとに設計・制御仕様が異なり、価格競争が起こりにくい。
  2. 継続的な保守契約による安定収益
     稼働停止リスクを避けたい顧客が、長期メンテ契約を締結する傾向が強い。
  3. 海外展開の収益性向上
     為替差益に加え、現地工事比率の拡大による利益率上昇が見られる。

これらの構造的強みが、業界平均の約1.5倍の収益力を支えている。


5. 売上構成比

  • 超純水装置・純水装置関連:63%
  • 排水処理・再利用装置:17%
  • 保守・メンテナンス・薬品供給:15%
  • その他(研究開発支援・コンサルティングなど):5%

主力の装置販売が全体の約6割を占める一方、メンテナンスや薬品販売によるストック収益も着実に拡大している。半導体向けが7割以上を占めるが、近年は医薬・食品・EV電池関連など、分野の多様化も進む。


6. 財務健全性

自己資本比率は62.4%、有利子負債比率は12%と、極めて健全。潤沢な手元資金を背景に、研究開発や海外拠点整備にも積極的だ。営業CFも毎期プラスを維持しており、財務的リスクは低い。加えて無借金経営に近い体質が、景気変動時の耐久力を高めている。


7. 過去10年の推移と今後の展望・リスク

2015年頃の売上高は約250億円であったが、2025年には3倍以上に拡大。特に2019年以降は半導体設備投資ブームを追い風に急成長した。
今後もAI・EV・データセンターの拡張需要が続く限り、微細化技術の進展に伴って「より純度の高い水」への要求は強まる見込み。2026年度には売上高900億円を目指す中期計画も進行中だ。

ただしリスク要因としては、①半導体市況の急減速、②主要顧客への依存度の高さ、③部材調達コストの上昇、④海外拠点での人材確保難、などが挙げられる。とはいえ、脱炭素や水リサイクル需要の高まりが長期的な追い風になる可能性は高い。


8. 競合他社との比較と立ち位置

競合はオルガノ(6368)、栗田工業(6370)、日本ピュアテック(5410)など。
栗田工業は総合水処理大手として幅広い分野に展開するが、野村マイクロ・サイエンスは「超純水」に特化した技術深度で際立つ。オルガノは産業用全般に対応するが、半導体分野での実績・シェアはNMSが優位とされる。

市場では「半導体特化型の純水専業メーカー」として明確なポジションを確立しており、利益率でも上位を維持している。


9. 総括

野村マイクロ・サイエンスは、半導体製造工程に不可欠な水処理技術を核に、安定した利益体質と高い技術競争力を兼ね備える企業だ。景気変動に左右されにくいメンテナンス収益が堅調で、財務基盤も極めて強固。

一方で、業績はどうしても半導体投資サイクルの波に影響を受けやすく、短期的な調整局面では株価変動が大きくなる点には注意が必要だ。

中長期的には、AI・EV・データセンターなど次世代産業の拡大が続く限り、超純水需要は確実に伸びる。水処理というニッチだが不可欠な領域で、今後も業界の“黒子”として確かな存在感を放ち続けるだろう。