スタジオアリス(2305) 人生の収めるフォトスタジオチェーン


1. 企業概要

スタジオアリスは、子ども・赤ちゃん・ファミリーを対象にした写真撮影サービスを全国展開している企業です。主力ブランド「こども写真館スタジオアリス」を中心に、ショッピングセンター内・スーパー併設・郊外型など多様な店舗を構え、撮影から衣装・メイク・ヘアセット・撮影データ・アルバム・プリントまでワンストップで提供しています。(株予報Pro)

製品・サービスのポイントとして、子どもの記念撮影(七五三、お宮参り、年賀状用など)、赤ちゃん写真、家族写真、衣装レンタル・着付け・ヘアメイクなどの付加価値サービスがあります。衣装製造・卸売事業も持っていますが、規模は小さく、ほぼ撮影サービスが主軸となっています。(株予報Pro)

経営方針として、「顧客に選ばれるスタジオ」「安心・安全で満足度の高い撮影サービス」「親子・家族がまた来たくなる場の提供」を掲げており、店舗網の維持・向上、衣装・撮影技術の充実、プロモーション強化、ストックビジネス(撮影後オプション販売など)を意図しています。

事業構造・強みには以下のようなものがあります:

  • 店舗チェーン展開によるブランド認知・安心感。
  • 衣装レンタル+撮影+商品販売という“ハレの日”ワンストップモデル。
  • 撮影データ・プリント・アルバム販売など、支店数(撮影件数)に比例して継続収益が見込まれる(ストック性あり)。
  • 衣装や撮影サービスが「オーダーメイド」であり、競合による価格競争が抑えられやすいという側面(衣装レンタル・プロ撮影という付加価値モデル)――これは、例えば貨物用エレベーターのオーダーメイド構造と同様の価格競争回避性に準じて説明可能。
    一方で、少子化・撮影ニーズの変化・競合台頭・コスト上昇といった外部環境への感度も高いです。

2. 直近の業績と収益性

直近決算(2025年2月期・連結)における主要な数値を整理します。

  • 売上高:3,559.8億円(前期比 -2.2%)(IR BANK)
  • 営業利益:30.21億円(営業利益率=約0.85%)※ 3,021百万円/355,980百万円=0.85%程度。(スタジオアリス)
  • 経常利益:30.51億円(前年比 +31.4%)(IR BANK)
  • 当期純利益(親会社株主帰属):13.65億円(前年比 +17.9%)(IR BANK)
  • 自己資本比率:約72.2%(自己資本 29,779百万円/総資産 41,223百万円)(トレーダーズ・ウェブ)
  • ROA(総資産利益率):経常利益3,051百万円/総資産41,223百万円 ≒7.4%
  • ROE(自己資本利益率):当期純利益1,365百万円/自己資本平均(前期29,672百万円+当期29,779百万円)÷2 ≒ 4.6%程度

(※営業利益率・ROEは公式開示値ではなく、概算値です。)

収益性として、売上高はわずかに減少している一方で利益は大きく改善しており、コストコントロールや付加価値商品販売の改善が寄与したと考えられます。ただし、営業利益率が1%未満というのはサービス業としても低い水準で、構造的な改善余地が明確です。


3. セクター分類と指標平均

スタジオアリスは、東証の33業種区分では「サービス業」に分類されます(証券コード2305/東証スタンダード)(バフェットコード)

ただし、サービス業という広い枠の中で、撮影サービス・レンタル衣装・記念写真館という特定のサブセクターであり、類似企業の平均指標を得るのは容易ではありません。一般に「サービス業」全体の平均営業利益率やROEが公表されていますが、写真館特化の平均値は限定的です。例えば、フォトスタジオの経営指針では「撮影サービス利益率 20~50%」「プリント・商品販売利益率 50~70%」という参考値があります。(WEB予約システム | totoco-net トトコネット)

日本全体のサービス業(中小企業含む)では、近年利益率改善が鈍いという報告もあります。(中小企業庁)

従って、スタジオアリスの比較対象としては「フォトスタジオ業界の収益率目安」が参考になります。


4. セクター平均との乖離と要因

スタジオアリスの営業利益率(約0.85%)は、前述のフォトスタジオ利益率目安(撮影サービス20~50%、プリント等50~70%)から大幅に乖離しています。なぜか。主な要因を整理します:

  • 主力の撮影サービス・衣装レンタル・商品販売という構成自体は付加価値型ですが、チェーン展開・多店舗運営の固定費・人件費・販管費がかなりかかっているため、利益率が圧迫されていると考えられます。
  • 少子化・撮影需要の飽和・店舗数の減少といった需給側の変化が売上減少に繋がっており、規模拡大による収益性向上が難しくなっているという構造的な問題があります。(note(ノート))
  • 「オーダーメイド的」な撮影・衣装サービスゆえに1件あたりの受注単価は高めですが、顧客数そのものが頭打ちになりやすく、増加フェーズから維持フェーズへ移行している可能性があります。
  • 設備・店舗・スタッフなどの固定費比率が高く、1件あたり売上が伸び悩むと費用圧が重くのしかかる構造です。
  • チェーン化・全国展開しているため、地域間における対応コスト・プロモーション費・物流/衣装管理が集中化していて、単店型フォトスタジオと比べて効率化余地が大きいと思われます。

以上から、同業典型の利益率目安と比べると当然乖離しており、その原因として「規模維持・多店舗化・需給変化・固定費構造」が挙げられます。


5. 売上構成比

2025年2月期(連結)における売上構成比は以下の通りです。(株予報Pro)

  • 写真事業:95.0%(35,432百万円)
  • 衣装製造卸売事業:5.0%(1,883百万円)

解説:ほぼ全収益を写真撮影・レンタル・商品販売という「写真事業」が占めており、衣装製造・卸売は補助的という位置づけです。結果として、写真館としてのサービス業特有の収益構造に集中しています。写真事業に売上のほとんどが依存しているため、需要変化(少子化・撮影件数の頭打ち・顧客単価の伸び悩み)は収益に直結するというリスクを伴います。


6. 財務健全性

スタジオアリスの財務状況を整理します。

以上から、店舗型サービス業としては財務基盤は比較的健全と評価できます。高い自己資本比率・低レバレッジ構造で、金融ショックや景気後退時の耐性は一定程度あります。ただ、売上減少トレンドに対する固定費の重み・利益率の低下という構造的な課題があるため、収益改善がなければ財務健全性を保つのは将来も無条件ではありません。


7. 過去10年の推移と今後の展望・リスク

過去10年の推移

過去10年という厳密な10年分の連続データはここでは省略しますが、直近5年の通期売上高および営業利益の推移から概観します。(スタジオアリス)

  • 2021年2月期:売上36,352百万円/営業利益4,731百万円
  • 2022年2月期:売上40,672百万円/営業利益6,015百万円
  • 2023年2月期:売上38,564百万円/営業利益4,017百万円
  • 2024年2月期:売上36,396百万円/営業利益2,283百万円
  • 2025年2月期:売上35,598百万円/営業利益3,021百万円

このように、2022年2月期にピークを迎えた売上が、その後減少傾向にあり、営業利益も2024年に一時大きく落ち込んだ後、2025年にやや回復してきています。売上減少は主に撮影件数の減少・少子化・店舗数の純減などの影響が指摘されています。(note(ノート))

今後の展望

  • 成長要因として、ハレの日需要(七五三、お宮参り、入園・入学、バースデー)や家族写真需要の復調、デジタルサービス強化(撮影データ・SNSシェア・オンライン予約)などが挙げられます。
  • また、衣装レンタル・撮影後商品(アルバム・データ)などの単価アップ余地、既存店舗の効率化・店舗リニューアル・プロモーション強化により、1件あたり売上増・利益率改善を図ることが可能です。
  • 事業構造的には、顧客の再来率・紹介率を高めるストック性のあるモデルに転換できれば、収益安定化に資する可能性があります。

リスク

  • 少子化・出生数減少による撮影需要の構造的縮小。
  • 顧客の価値観変化(スマホ撮影・SNS投稿増加等)による「プロ撮影サービス」の需要減。
  • 競合(低価格フォトスタジオ・オンライン撮影サービス)との価格競争激化。
  • 多店舗展開の維持コスト・人件費・衣装管理コスト・店舗賃料の上昇。
  • 固定費構造が重いため、売上減少時に利益が確保できない点。

8. 競合他社との比較と立ち位置

競合としては、例えば アスカネット(2438)、フォトクリエイト(6075)など、写真関連・アルバム・メモリアルフォト市場の企業があります。例えばアスカネットとの比較分析では、スタジオアリスの売上規模がかなり大きく、従業員当たり売上も高めという特徴があります。(note(ノート))

スタジオアリスの立ち位置としては「国内最大級の子ども・ファミリー写真館チェーン」としてブランド力・店舗数・衣装品揃えで優位に立っています。規模のメリットがある一方で、収益性(利益率)では小規模で専門特化したフォトスタジオに劣る可能性があります。つまり、規模で勝ち、効率化で課題を抱えているという立ち位置と整理できます。


9. 総括

スタジオアリスは、子ども・家族写真の分野で強固なブランドとチェーン展開を有しており、撮影+衣装+商品販売という高付加価値モデルを持っています。財務基盤も比較的堅調で、自己資本比率72%超という点は安心材料です。

しかしながら、売上高の減少傾向および営業利益率が非常に低いという構造的な課題が明らかです。撮影需要の先細り、固定費比率の高さ、1件あたり売上・利益の伸び悩みが足を引っ張っています。中長期で注視すべき点としては、以下が挙げられます:

  • 1件あたり単価の引き上げ・撮影件数の維持・プロモーション強化
  • コスト・固定費の削減・店舗効率化
  • 新サービス(オンライン撮影、デジタルデータ販売、サブスクリプション形式等)の展開
  • 少子化の影響緩和に向けた施策(例えば家族単位・ペット含む撮影・成人向け撮影等の拡張)

ポジティブ面として、ブランド力・チェーン網・ストック性のあるサービス構造は強みです。ネガティブ面として、収益性・成長性に対する明確な改善が必要という点があります。投資家が注視すべきは「売上低下に歯止めをかける施策」と「利益率改善を示す具体的な数字(例えば営業利益率5%以上など)」が出てくるかどうか、というところでしょう。