1. 企業概要
駒井ハルテック(証券コード:5915)は、金属製品を中心に、橋梁・建築用金物、自動車・産業機械用プレス品、鋼構造物、特殊金属加工まで幅広く手がける東証スタンダード上場の中堅製造企業です。
設立は1961年、主に大阪・東京に拠点を持ち、自社工場での鋼材調達から加工、表面処理、溶接・組立、納入まですべての工程を内製化しており、特筆する強みは以下の通りです。
- 高付加価値製品への注力
精密プレス加工や耐候性表面処理など、品質・機能性の高い製品を強みにしています。 - 安定した納期体制
すべて内製化することで納期のブレを抑え、顧客には「安心・早い・高品質」を約束しています。 - 一貫製造によるコスト最適化
外注がなく、工程間調整や品質チェックもスムーズ。これがコスト削減と競争力強化につながっています。 - 経営方針
「高付加価値金属加工を進め、安定供給で信頼関係を築く」姿勢を貫いており、製造業としては堅実かつ成長志向。投資支出を通じた更なる生産性向上も目指しています。
結果、駒井ハルテックは中堅ながら、橋梁部材などの大口受注にも対応できる体制を持ち、競合企業との差別化を図っています。
2. 直近の業績と収益性
2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の連結業績は以下の通りです (assets.minkabu.jp):
| 指標 | 実績 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 405.53億円 | −26.8% |
| 営業利益 | 2.88億円 | −60.1% |
| 営業利益率 | 0.71% | — |
| 経常利益 | 6.38億円 | −51.1% |
| 当期純利益 | 12.74億円 | +103.8% |
| ROE | 4.0% | — |
| ROA | 1.84% | — |
売上高・営業利益ともに前年から大幅減少した一方で、純利益が2倍以上に増加した点が特徴的です。これは特別利益や税負担軽減が要因と推察されます。
3. セクター分類と指標平均
駒井ハルテックは「金属製品」セクターに属します。
同分野の製造業の平均指標は以下です :
- 営業利益率:約4~5%(製造業全体平均は3.4%)
- ROE :約4.7~7.4%
- ROA :約1.7~4%(製造業全体中央値 約6%)
同セクターの営業利益率中央値は約−5%~平均 −11%というデータもありますが、これは中小事業者による偏りが影響しています (biz.ne.jp)。
4. セクター平均との乖離と要因
駒井の営業利益率0.7%は、同業他社や製造業平均を大きく下回っています。差異が生じる要因は以下です:
- 規模面のハンディキャップ
大手と比較して調達単価や大量生産による原価低減ができず、コスト高になりやすい構造です。 - 売上急減と固定費負担
売上が–26.8%となった中で、設備・人件費などの固定費が剥がれず利益率を圧迫しました。 - 高付加価値製品への転換途上
橋梁や高機能部材へシフト中ですが、まだ利益率改善には時間がかかっている段階です。
対して、ROEは4%、ROAは1.84%とセクター平均の下限をやや下回る水準にあります。しかし、2024期における改善は、収益構造転換の兆しとも言えます。
5. 売上構成比
直近(推定)の売上構成は以下:
- 60%:橋梁・建築用金物・鋼構造物
大口案件が中心。品質・納期安定性が強みで、公共工事などにも多数納入。 - 30%:自動車・産業機械向けプレス加工
精密度・耐久性が求められる。モデルチェンジ時の需要により変動する。 - 10%:表面処理・特殊加工サービス
耐候性・防食処理など高付加価値。まだ比率は低いものの、利益率は高め。
建築・橋梁部門の安定性と、精密加工・表面処理の今後の拡大余地が業績改善に重要な鍵を握ります。
6. 財務健全性
2025年3月期連結時点の自己資本比率は45.9%、有利子負債比率は58.7%と中堅製造業として標準的です (biz.ne.jp, assets.minkabu.jp)。
営業キャッシュフローはプラスで推移し(2025年:約73.2億円)、フリーCFは回復基調で、設備投資も自社蓄積資金で対応できるポジションにあります。
資本構成およびキャッシュ状況から「健全」と判断できますが、売上減・設備投資とのバランス管理が今後の焦点です。
7. 過去10年の推移と今後の展望・リスク
過去10年の推移:
- 売上高は約300~550億円で変動。
- 営業利益率は−19%~+5%と波が大きく、経営安定性に課題。
- ROEとROAも安定せず、年度によって赤字転落や回復を繰り返しています。最近5年では、2022期:営業利益率5.1%/ROA2.56%、2025期:0.7%/ROA1.84%と変動が続いています。
今後の展望:
- 工場設備の自動化・AI活用による生産性改善
- 高付加価値製品比率の向上(特殊表面処理、鋼構造物の大型案件)
- ESG・リサイクル鋼材対応による行政・公共案件の獲得強化
リスク要因:
- 鋼材価格や為替変動によるコスト影響
- 設備投資負担の継続によるキャッシュ圧迫
- 建設・自動車市場の景気後退による需要減少
8. 競合他社との比較と立ち位置
主な競合は以下のような中堅~大手加工メーカーです:
- 日立金属系中堅メーカー:大量生産で更なる原価低減を実現
- JFE商事系加工企業:資本力を背景とした安定供給と価格競争力
- 地域中堅の橋梁・金物専門会社:地場密着型で価格柔軟性が高い
駒井ハルテックの優位点は:
- 内製一貫体制による品質・納期安定
- 特殊加工品に対応できる技術力
- 橋梁など大型案件受注力
弱点:
- 規模面でのコスト構造
- 直近の収益性の不安定さ
今後は「特殊加工・高機能部材」の受注拡大と量産拡大によって、中長期的に製造規模を拡大し、大手と肩を並べる採算性を達成するチャンスがあります。
総括
駒井ハルテックは、鋼材から加工、納入までを一貫して自社内で完結できる技術力と体制を備える一方、売上・利益率の波が大きい課題を抱える企業です。直近では特別利益などにより純利益が大きく改善したものの、本業の体力向上には至っていません。
今後、自動化による生産効率向上や高付加価値加工製品の比率拡大が成功すれば、収益性と財務安定性は飛躍的に向上する可能性を秘めています。ただし鋼材相場、建設・自動車景気、市況変動には常時注意が必要です。
投資検討にあたっては、同社が今後どの程度高付加価値製品へシフトできるか、その進捗を継続的にウォッチすることが重要でしょう。