人が変われば、組織が動く
1. 企業概要
株式会社セルムは、外から見ると「人材育成コンサル」みたいに思われがちだけど、実際はもう少し“上流工程”に関わってる会社。
たとえば研修講師派遣や社員教育パッケージ販売みたいな、どこでもやってる労働集約型の仕事じゃない。
彼らのクライアントはトヨタ、三菱商事、資生堂、NTT、花王など、日本を代表する大企業クラスが中心。
セルムの実際の業務はこんな感じ:
- 経営層と一緒に「会社の中長期ビジョン」や「次世代リーダー像」を整理
- その理想像に合わせて、社内の人材育成プランや人事制度を設計
- さらに、その人たちが育つように研修や対話型プログラムを組む
- 研修後も経営層と継続的にミーティングして、会社文化の変革を支援
つまり、「教育」よりも「経営支援」に近い。人事部の延長線ではなく、社長室や役員直轄案件になることも多い。
あと特徴的なのは、“講師を抱えない”モデル。セルム自身が研修をやるわけじゃなく、外部のプロフェッショナルや大学教授、経営経験者、各業界のエキスパートをネットワーク化して、案件ごとに最適なチームを組む仕組み。だから、案件ごとに独自のプログラムをつくる「プロデュース型」。これが「価格競争になりにくい」理由。
一般人からすると、たとえば:
- 大企業の管理職研修で、「自分の上司が急に“リーダーシップ合宿”に行って帰ってきたら別人みたいになってる」あれ、裏でセルムが関わってることがある。
- ある会社の社長が、「次の幹部候補をどう育てるか」って悩んだ時に相談するのがセルム。
身近なところだと、セルムの支援先企業が開発したリーダー育成プログラムや、企業理念浸透プロジェクトの成果がニュースで紹介されていることもある。ただし、守秘義務が厳しいので「どの企業がどう関わったか」はあまり公に出ない。
ただし留意点として、規模は大企業と比べると小さめ(従業員数や売上規模)で、サービス業特有の人的資源依存、顧客集中リスク、為替・海外展開リスクなどの影響を受けやすい点も想定すべきです。
2. 直近の業績と収益性
- 2025年3月期(連結) 売上高:81.84億円 前年比 +??(前年実績 75.04億円)(みんかぶ)
- 営業利益:10.74億円(2025/3期)(みんかぶ)
- 営業利益率:10.74 / 81.84 ≒ 13.1%
- ROE/ROAについて明確な数値は直近資料に簡単には出ていませんが、ROEの業種平均目安を後述します。
- 直近第1四半期(2026年3月期第1Q):売上高22.69億円(前年同期比 +39.7%)/営業利益2.58億円(前年同期比 +17.4%)(Yahoo!ファイナンス)
このように、最近は「売上急拡大」フェーズに入っているように見えます。が、利益率の向上余地や安定化という点ではまだ課題もありそうです。
3. セクター分類と指標平均
セルムは「サービス業」の中でも「人材開発・組織開発支援」などが主力なので、東証33業種区分では「サービス業」に分類されると考えられます。
業種平均の指標(目安)は以下:
- サービス業(その他サービス業を除く):ROE 約15.9%/ROA 約4.5%(経済産業省データ)(5年間塩漬けしてしまった株を運用してみる)
- 営業利益率の目安:サービス業全体では3.25%(かなり低め)との中小企業庁調査。(ダイゾーコンサルティング株式会社)
- ただし、上場企業など高付加価値型サービス業では“20〜30%台の営業利益率”を達成している会社も見られます(ランキング参照)(Strainer)
したがって、セルムが属するジャンル(高付加価値・人材系サービス)を特化して考えると、上位帯の収益性が期待されるセグメントと見てよいでしょう。
4. セクター平均との乖離と要因
セルムの営業利益率13.1%(2025/3期)という試算は、サービス業平均(3〜5%程度)と比べてかなり良い水準です。
要因として考えられるもの:
- オーダーメイド型・高付加価値型のサービス提供により、単価が高く利益マージンを確保しやすい構造。上記整理した「次世代経営幹部育成」など、他サービス会社との差別化が効いている。
- 継続支援型・ストック型の収益も狙っており、一回きりの研修より長期関係を築けるため、顧客あたり lifetime value を高めやすい。(Fisco)
- 顧客が大企業・グローバル企業ということで、研修内容・サービス設計において競争が価格だけでなく「質・信頼」で決まる可能性が高い。
しかし、収益性が平均以上ということは「逆リスク」もあります: - 高付加価値型サービスゆえに、提供側の人的コスト・講師ネットワーク・海外拠点コストなどがかさむ可能性。
- 売上拡大スピードが早い時期には、利益率が必ずしも比例して上がるとは限らず、案件の採算や新規顧客獲得コストにより利益率低下のリスクあり。実際、1Qの営業利益率が前年同期比で低下傾向にあるという指摘もあります。(みんかぶ)
つまり、平均を上回る収益性を確保している点はプラス評価できますが、安定した収益化・成長の持続性は注視すべきです。
5. 売上構成比
セルムの2025年3月期連結時点でのセグメント売上構成比は以下(株予報PROデータ)(株予報Pro)
- 組織・人材開発 … 93.8%(76.81億円)
- ステークホルダーリレーション … 6.2%(5.04億円)
つまり、ほぼ人材・組織開発事業が売上の柱です。 - 組織・人材開発が圧倒的に主力であり、サービス提供設計・カスタマイズ・研修・コンサルティングなどを通じて収益を得ている。
- ステークホルダーリレーション事業はまだ小規模だが、将来的な成長余地・収益寄与拡大が想定されており、複数事業への分散も視野に入れていると見られます。
この偏りを把握しておけば、「人材・組織開発」分野の市況変動がそのまま業績影響を受けやすいというリスクも自覚できます。
6. 財務健全性
財務の健全性を判断する上で確認できる情報は以下:
- 純資産比率:2025/3期において自己資本比率は36.9%と報じられています。(みんかぶ)
- 短期借入金の増加など、流動負債の動きもみられており、1Q時点で負債合計が42.92億円、純資産27.55億円という数字も。(Yahoo!ファイナンス)
この数値から判断すると、「まずまず」と言えますが、特段高い安全性というわけでもありません。自己資本比率30~40%というのはサービス業では許容範囲ですが、債務・キャッシュフローの状況、顧客集中・契約継続率なども合わせて見たいところです。
また、人材・組織開発サービスという性格上、大規模設備投資が必要というタイプではないため、重装備型産業と比べれば財務リスクは低めに思われます。
7. 過去10年の推移と今後の展望・リスク
過去推移:
- 売上高:2022/3期 64.71億円、2023/3期 72.65億円、2024/3期 75.04億円、2025/3期 81.84億円と、増収傾向。(みんかぶ)
- 営業利益:2022/3期 7.29億円、2023/3期 9.36億円、2024/3期 10.38億円、2025/3期 10.74億円。(みんかぶ)
このように、過去数年は順調に成長してきています。ただ、「10年」全体で見ると、起点が小さいため大きな飛躍というよりは安定的成長フェーズと言えそうです。
今後の展望とリスク:
成長要因 - 法人・大企業における「人材育成」「次世代経営幹部育成」「組織変革」ニーズの継続。
- グローバル展開・多言語対応・海外人材育成の拡大。
- ステークホルダーリレーション事業の拡大、売上構成比の改善余地。
リスク - 競合増加:同様サービスを提供する企業(国内外)との競争激化。
- 顧客企業の研修・教育投資抑制:景気悪化やコスト削減の流れで、人材育成が後回しになる可能性。
- 契約継続率の低下・案件取得コストの上昇。
- 人材・講師の確保・育成とサービス品質維持の難しさ。
- 売上がほぼ「人材・組織開発」一極であるため、収益構造の柔軟性がやや弱め。
8. 競合他社との比較と立ち位置
セルムの主要な競合としては、例えばグロービスやその他人材・組織開発系コンサルティング会社が挙げられます。(Fisco)
比較ポイント:
- 規模:セルムは売上80億円台と中小規模。競合の中にはより大規模な企業もあり、スケールの面ではやや劣る可能性あり。
- 構造:セルムは「オーダーメイド型」「高付加価値型」「継続型支援」を強みにしており、他社より差別化されている可能性あり。
- 立ち位置:専門性・顧客密着型を前提に、競争において「価格勝負」ではなく「質/関係性」で勝負しようという戦略と見えます。これは収益性を高める上で有利。
- ただし、スケールメリット・ブランド認知・海外展開支援力などでは、より大きなプレーヤーに比べて課題があるかもしれません。
9. 総括
セルムを中長期で眺めると、かなりポジティブな面と、注意すべきネガティブな面とが見えます。
ポジティブ面
- 営業利益率13%超という、サービス業としてはかなり優秀なレベルを達成しており、平均を明確に上回っている。
- 売上も増加傾向であり、「人と組織」の領域で時勢にあったニーズを掴んでいる。
- 事業構成の偏りはあるものの、主力事業の収益性が高いため、集中戦略として機能している。
ネガティブ面/注意点
- 財務健全性・自己資本比率はいわゆる「高い安全域」と言えるわけではなく、何かショックが来たときの耐性には余地がある。
- 競争環境・顧客ニーズ変化・人材確保コストなど、サービス業特有のリスクが常に存在。
- 売上構成がほぼ一つの事業領域に依存しており、事業ポートフォリオの多様化が今後の鍵。
- 成長ペース自体は良好だが、爆発的な成長モデルというよりは「堅実成長+収益性改善」のフェーズと捉えるべき。
今後投資家が注視すべき点
- 契約継続率・顧客単価の動向:次世代経営幹部育成プログラムなどの売上比率がどれだけ伸びるか。
- 新規顧客獲得/アップセルの状況:既存顧客深耕が利益率向上に直結する。
- ステークホルダーリレーション事業など、第二の柱の成長具合。
- 人材・講師体制の拡充と、それに伴うコスト増加・利益率低下リスク。
- 景気・企業の教育投資意欲に左右されやすい業態であるため、マクロ景況感の変化も要モニタ。
結論として、セルムは「収益性/成長性ともにまずまず優れたサービス業」であると評価できますが、期待しすぎず、着実性を重視する姿勢で観察することをお勧めします。